令和6年予備論文再現答案 民法

設問1(1)

1 CのDに対する請求は、所有権に基づく返還請求である。その要件は、①Cが乙土地を所有していること、②Dが乙土地を占有していることである。Dは乙土地を占有しており、②は満たす。

2 では、①が認められるか。

(1) 「相続させる」旨の遺言は相続分の指定であるところ、Aが死亡したことで、「乙土地はCに相続させる」旨のAの遺言により、乙土地の所有権を取得する(886条)。

(2) これに対し、Dは「第三者」(889条の2)に当たり、Cは乙土地所有権の取得を対抗できないと反論する。

(3) 「第三者」とは、当事者及びその包括承継人以外の者で、登記の欠缺を主張する正当な利益を有する者をいうところ、Dは共同相続人であるBから乙土地を譲渡されており、登記の欠缺を主張する正当な利益を有するから、「第三者」に当たる。

 また、Cによる乙土地の所有権の取得は、「相続による権利の承継」に当たる。

(4) よって、Dの反論は認められ、①を満たさない。

3 以上より、Cの請求は認められない。

設問1(2)

1 AのFに対する請求は、所有権に基づく返還請求である。その要件は、①Aが乙土地を所有していること、②Fが乙土地を占有していることである。Fは乙土地を占有しており、②は満たす。

2 では、①が認められるか。

(1) Bは相続により乙土地の所有権を取得している。そして、BはEに対し乙土地を譲渡し、EはFに対し乙土地を譲渡しており、Fは乙土地の所有権を取得している。

 もっとも、失踪宣告の取消し(32条)により、遡及的にBは無権利者となり、Fもまた無権利者となるとAは主張すると考えられる。

(2) これに対し、Fは、EF間の売買は「善意でした行為」に当たり、影響を及ぼさないと反論する。

(3) しかし、「善意でした行為」とは、当事者双方が善意であることをいう。

 Eは、EF間の売買当時、Aが生存していることを知っていたから、EF間の売買は「善意でした行為」に当たらない。

(4) よって、Eの反論は認められず、①を満たす。

2 以上より、Aの請求は認められる。

設問2(1)

 誤振込みにより、Gは500の損失を受け、Jは500万円の利益を得ており、因果関係もある。誤振込みでも預金債権は成立するから、「法律上の原因」があるのが原則である。もっとも、誤振込みの事実につき悪意であった場合には、例外的に「法律上の原因」がない。Jは、K銀行からGは誤振込みであるとして組戻しを求めている旨説明されており、誤振込みの事実につき悪意だった。よって、Gの請求は認められる。

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